嫌な時は、仕事場に行かなくても良くて、得た自由・・・
朝、縁側から見た、空はどこまでもどんよりで今にも落ちてきそう。
空は白い。
きのうも図書館に行って、帰りの夜、図書館から出た時、前日の暖かさ、春がやってきた空気とは違い、
ピンと張りつめた空気が伝わってきた。
図書館の出入り口に職員が、雪解け用の砂をまいていた。
今朝、起きた、今日も、昨日と同じように図書館に行く予定だった。
でも、寒い、
ベットからでなくてもいつもとは違う気温の低さが伝わってくる。
それでも起き上がり、
母が暖めていた台所の椅子に座り、朝ご飯を食べる。
予報の雪が当たって、朝からみぞれまじり。
冷たく冷えた居間を通り過ぎ、縁側から庭を見渡すと、白く薄化粧ができていた。
私は、仕事をやめてから、書くようになった。
それでも、家ではあまり集中して書けない、
他のことにとらわれて、気が散ってしまう。
最近見つけた、図書館は書くのにはとっておきの、お気に入りの場所だ、
自転車で駅まで10分、そこから電車でひと駅かかる。
でも、図書館に行くと、何時間でも書いていられる。
寒さと、みぞれまじりの空と相談する。
パソコンを担いで自転車をこぐ、雨のなかだと厳しい。
帰りに雪が積もり、滑って、転んでパソコンが壊れたらしゃれにならない。
どうしようか・・・
とりあえず起きたが、寒いのでゆたんぽをつくり、またベットに入る、うつらうつら寝てしまった。
会社員での時では考えられないことだった。
天気をみて、外に出るのか、でないのか考えるなんて、
仕事があれば、台風だろうが、大雪だろうが、行かねばならなかった。
きっと、いま頃、と、私が働いていた場所のことを想像した。
私がいたところは、通信設備の管理もしていた。
大雪がくるたびに、
たくさんの社内メールが飛び交っていたことを思い出す。
ひどい時は、電話機をスピーカーフォンにして、私たちにはどうすることもできない天候についての、あれやこれやのやり取り、電話会議を聞かされながら仕事をすることも良くあった。
ただだ、天候のせいでめんどうな仕事が増えないことを、心の中で祈るしかなかった。
ただでさえ、天気による影響で外部からの電話が多くなるのに、電話会議のノイズが余計に仕事場を騒がしくなる。
騒音だらけだった。
そんなことを思い出しながら、
ベットに戻って、ゆたんぽの暖かさの誘惑に負けを認めたとき、
図書館へ出かけるのはやめた。
布団の中でまどろむ。
ベットの中でウトウトしてから眼が覚め、時計を嫌々確認したら、もう13時を過ぎていた。
思っていた体感よりも長く寝てしまっていた。
それでも、くるまった布団からは出られない。
昨日、書いた記事や添削をお願いした文章を、寝転がりながらスマホで見直す。
メールのやり取りも読み返す。
外は相変わらず、いまにも雪が降りそうないきおいを空から感じ、そして静かだ・・・
雪の日独特の静けさがある。
家だとあまり書けないのだが、さすがに起きないとまずいかなと思い、とりあえずストーブを点ける。
横着にもほどがあるが、ベッドから出ないで手をのばして、かろうじて届くストーブのスイッチを押す。
お腹減ったな、何か食べたい・・・
ただ、ただ、寒い、そしてお腹が減る、本能のままに感情がわきおこる。
ストーブを点けてから、部屋が暖まったのを確認して、ベットから出る。
服をかなり厚着にして着替える。
えいやとばかりに部屋の戸を開けて、勝手口の方へ向かう。
勝手口に向かうと、
母が、買い物からちょうど帰ってきた。
たくさんの食材を抱えて家の中に入ってくる。
雪が降るので、食材をまとめ買いしてきたそうだ。
私は、お昼食べてないし、ちょっとお腹減ったのでパン屋に行ってくると母に告げる。
母も食べると言い、何か、パン買ってきてと頼まれる。
なんでも良いよと言われた。
母が貯めていたパン屋のスタンプカードを受け取って外に出た。
自転車にまたがり、外の空気を感じる。
そと、まるで、静か・・・、世界が立ち止まったかのようにシーンと雪の空を待ち構えている。
近所の車は、雪に備えて、ワイパーを上げていた。
パン屋は自転車で、5分程度のところにある。
雪に備えた町は人も少なく、もちろんパン屋もがらがらで、新しい新人定員をもう一人の店員が教えていた。
レジ打ちも慣れない店員なので、時間がかかるのだが、
映像で写ったパンのかたちで、会計が決まる仕組みのレジを一緒に私も教わるように眺めていた。
古い店員が、写された映像をみて、これは誤認識だから会計から、はぶきますと教えているのを一緒に見つめる。
コーヒーと数種類のパンを買って、再び自転車をこぎ、家に戻る。
パラパラと、雪ではなく、氷の粒が自転車のハンドルを握る両腕に落ちはじめていた。
部屋に戻ると、ストーブは寒さを感じて、こんこんとその威力をまして部屋を暖めていた。
厚着をしていった洋服を部屋に置く。
台所のテーブルの上には、雪に備えて母が買ってきた、いつもよりかさを増した食材が、置いてあった。
私は、思い出したように、体が部屋の暖かさに慣れないうちに外に出て、家の車のワイパーを上げた。
母の部屋に行き、私が買ってきたパン、どれを食べるだのと、母とやり取りをして、
自分の部屋に戻り、ゆっくりと文字を書く・・・。
暖かい部屋に戻り、カタカタとパソコンを打つ。
暖かいコーヒーと、パン・・・。
なんだか、これから今にも雪が降りそうな、こんな非常時の感覚も、家にいるとてつもなく愛おしくて・・・
カリカリした食感のパンをかじりながら、ただ、文字を打つ。
あったかい部屋。
きのう、添削から戻ってきたメールの内容を読み返す。
部屋から感じる外の空気は、雪に備えた緊張感が伝わってくる。
それは、雑草の葉、ひとつからも、
もう春を感じて顔を出したと思われる雑草も、今夜の寒さに備えて凛としている。
ただ、たんたんと部屋を暖めるストーブの音、カタカタと響くキーボードの音、
先ほど、買ってきたパンを届けに母の部屋に行った時、
ストーブをいつも以上に強く炊き、部屋にこもりながら、好きなテレビを観ている母、
黒澤映画がどうのこうの私に話かけてきた。
もう買い物も済ませ、食材もたくさんあるので、落ち着ているようだった。
通勤していた時、雪の日の電車のホームは寒かったな、
そんな、
寒い駅のホームからもずっと、ずっと遠ざかった・・・
うっとしい、何度も何度も送られてくる、大雪警報、悪天候警戒の社内メールも遥か彼方、もう私にとってはずっと遠い場所の存在だ・・・。
ことあるごとに、緊急警報のように突然発声する電話会議のスピーカーフォン、
現場から、雪で、この先どうするのか、絶えず電話がかかってきたあの時の職場・・・
もう、そんな喧噪まみれで殺伐としたところから、ずっと遠ざかった・・・
今、文字を書きながらいるのは、ひっそりと安全に包まれた場所・・・。
雪でも外にでなくて良いのなら、
ああ、やっぱり、仕事、行かなくなって良かったな、
たかが、雪ひとつで、
私は、なぜか、とても心が落ち着き、穏やかな気持ちになりながら・・・
膝に、買ってきたパン屋の袋を抱えて、パンをちぎり、かじりながら、暖かいコーヒーを飲んで、この文章を書いているのです。
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