久しぶりに感じた、長くて暑い、夏の一日
その日は、かねてからアクセスを狙って、記事を書いていた映画の放送日だった。
映画を何度も見直し、何度も修正をした記事だった。
とても暑い夏の7月のある日だった。
夏休みがはじまりの頃、新作映画の公開に関連し予想していた映画が地上波で放送された。
半年ぐらい前から、地上波で特集があるだろうと先生が予想し、冬の時期から書いていた記事だった。
その夏の日は、今までみたことのない光景、そして、景色を観測することになった。
もともとあった前触れのような前兆
その日は、朝から暑い日だった記憶が強い。
前日というか当日の明け方まで記事を書いていた。
ずっと猛暑が続き、昼間、記事書きに集中できないような毎日だった。
明け方、いちばん涼しくなったころにウトウトと寝つき、徐々に気温が上がってくるお昼過ぎに起きるような毎日になりつつあった。
お昼の気温の変化に苦しくなり目を覚ます。
横になりながらスマートフォンを覗き、時間を確認する。
お昼の12時近くになっていた。
これからもっともっと暑くなるだろうと空気、外から差し込む陽射しの強さから、ひしひしと感じた。
ふと、サイトのアクセス数も確認してみる。
その時点で、半年前の冬に書いていた記事にすでにアクセスがあり、記事単体ではいままで書いた記事のなかでいちばんアクセスがあった。
それでも、100PV(ページビュー)ぐらいだが、恥ずかしながら、記事単体でそこまで増えたことはなかった。
サイト全体では、今までの経験した一番多いアクセス数を超えていた。
この時点で、嬉しかったというよりも、心の中では、正直ホッとした。
アクセスが上がるのは、勘みたいなものだったが少し予想していた。
ただ、当日の夜の放送前からすでにアクセスが上がり、今までのアクセス数を超えるとは思っていなかったのだが。
もうすでに、ホッとしてしまったというか、やり切った感が正直あった。
お正月にあと少しで記事単体で99PVだった悔しさを、半年以上かけてやっと更新できた。
半年もかかっているのだから、他にブログを書いている人からすれば笑ってしまうような目標かもしれないが、そのあと「1」PVを突破できて、とても充実した気持ちになってしまった。
あくまで自分のなかで設定した目標、単なるこだわりだったがそれを超えた。
たった、アクセスが「1」足りずに、PVが100に届かなかったこと、それだけが心残りで、もう正直それで満足してしまった。
心のどこかで、いつかはお正月に発生したアクセスアップを超えたい。
はじめて味わった、お正月の気持ちをもう一度味わいたい、そして超えたい。
しかし、なかなか同じことがおこらずに、半年以上ずっと苦しんでいた。
数字をみて、気持ちがほっとしたのか、お昼に起きて、そのまま用事もあったので外に出かける。
心なしか足取りが軽い。
蝉の鳴き始めを感じた時期だった。
もう、個人的にはやり切った感があり、ずっと体調の部分を気にして、飲むことをやめていたビールを飲もうと決めていた。
とても暑い日だった。
半年の壁なんて、破れるときは、けっこうあっけないものなんだと感じた。
突然現れた流星群!?
お昼の用事を済ませ、家に帰ったあと、放送開始の時間になるまで、色々とやることをこまごま片付けて放送時間を待つ。
なんだかワクワク、ソワソワした感じがどこかにあった。
まだ放送開始前なのに、いままでのアクセスを超えた嬉しさがどこかにあったのだと思う。
とりあえず、急いで、ご飯を済ませ、お風呂に入って体を洗い、久しぶりに買った冷たいビールを冷蔵庫から用意する。
なんだかんだで、放送がはじまる直前にやっとTVを着ける。
ひそやかに、乾杯をした。
ゆっくり、好きな映画をみて冷たいビールを飲んで楽しもう。
そんな気分だった。
放送が始まる。
もうすでに、目標を達成している充実感か、ゆっくり好きな作品を見ようとTV画面を眺める。
久しぶりのビールは美味しいが、体にまわるのもはやい。
鼓動があがる感覚が懐かしい。
放送がはじまり、20分くらいして、しばらくしてから、ふと、気になった。
今のアクセス数ってどれくらいだろうか?
ほんとうになんとなしの気持ちだった。
スマートフォンを開いてみる。
・・・!?
・・・!!
っえ?
数値が今までみたことのないものだった。
他にアクセスがある人からみれば大したことないのだろうが、
開いたページには、リアルタイムの閲覧数が800を超えていた。
これは、ほんとうに何が起こっていたのか、びっくりした。
まだ放送開始から20分ぐらいだった。
というか、みんな放送をみないのだろうか!?
びっくりする。
どんどん上昇していき、変わっていく数値が少し不気味だ。
いままで、せいぜい、リアルタイムの数値をふと目にしても数人程度だった。
笑ってしまうが二桁なんて記憶にない。
桁が違いすぎる。
リアルタイムで閲覧している人数が三桁いっていた。
数十の単位で、数値が切り替わっていく。
人の心の興味を数値でリアルに表示しているのかと考えるとなんだか気持ち悪い気もした。
ただ、幸いなことに、その一瞬の数値の上昇も800~900を確認したところで徐々に下がってくる。
放送されている物語の展開も徐々に、内容が落ち着き、物語の方向が定まってきたからだろうか。
少し、残念な気持ちもあったが、それでも、まだ、数百単位の数が表示されている。
もう、ビールなんて飲んでいるどころではなく、そして放送すらゆっくり観ている状況ではなかった。
この数値の変化はとても、興味深い。
アクセスが上がった嬉しさもあったが、そのあとですぐに湧いてきた好奇心、
なんだか、人間の関心のバロメーターを数字で観測しているような気持ちになってしまった。
どこで数値が上がるのか下がるのか、このまま確認したくなった。
物語、序盤の800くらいの数値は一瞬だったようで、放送開始1時間を過ぎるころには数十というリアルタイムの閲覧に変わった。
面白いことに、物語の重要なシーン、いわゆるネタバレのシーンに関しては数字がガクンと落ちる。
みんな、物語の内容に注目している感じだった。
重要なシーンが終わるとまた、少し増える。
2時間の放送が終了する30分くらい前からずっと、数値とTVに映る場面、そして映画について書いた2つの記事のどちらに現在アクセスがあるのかずっとパソコンのモニターを眺めていた。
物語も終わりに近づく。
そして、民放独特のカットされたエンディングが終了する。
新しく公開される映画の宣伝がはじまる。
まだしばらく、数値を観測する。
放送も終わり、宣伝が終了するとまた数字が増える。
徐々にあがってくる数値が見ていて、面白いし、心地良い。
放送終了後、書いた感想記事に、アクセスが集まることは、本来そうなればと願っていたことだったからだ。
放送中のアクセスよりも嬉しい。
飽きることなくずっとパソコンのモニターを眺め、数字の変化を観察していた。
だんだんアクセスが落ちついてきて、数字も一桁になったのは日付が変わるくらいだった。
長い一日が終わろうとしていた。
あらためて、起こった出来事を振り返る。
こんなことになるとは想像していなかった。
正直な感想だった。
お正月にアクセスがあった時は、せいぜい、全体でも100PVを超えた程度だった。
おそらく、今回もそれぐらいだろうと思っていた。
この違いはなんだったのだろう、冷静に考えると、放送時間のような気がする。
やはり「ゴールデンタイム」ってあるんだと。
もう、すでにテレビなど日常の生活では、ほとんどつけて観ることがなかったので、ゴールデンタイムという感覚を思い出せなかった。
結局、その日は全体のアクセス数が4000を超えていた。
あとから考えると、これは、そんなにたいした数字ではなかったのかもしれない。
全国で視聴していた人たちが、放送をみてその映画名をふくめて検索するのだから、4000人くらいだと例えると中規模なライブホールくらいだろう。
常に、武道館なみに毎日1万PVあるブログからしてみたら比較にもならない。
ただ、今までアクセスが極端に上がった経験がなかったので、単純に、数値というのであれば、一瞬でも、800を超えた出来事は面白かった。
ようやく、アクセスが落ち着いた午前1時過ぎくらいに、TVを消す。
やっとパソコンの画面をとじる。
とても高揚した気分と、不思議な気持ちが混ざっていた。
ブログをはじめてから1年くらいして、初めて体験したことだった。
まさかこんなにアクセスが上がるなんて、いや、どこかで、そう、できればと考えていた。
ただ、現実になるとは、1年前から、信じてやってきたが、ほんとに起こるかは、正直、半信半疑だった。
達成感、ホッとした感じ、先生への感謝、それでも出てくる反省点、色々な思いが巡る。
ただ、ひとつだけ確かに確認できたこと、やればできること、それが他の人にとっては些細な数字かもしれないが、個人的には、充分まんぞくできることだった。
思い返せば、仕事がつらくて、生き方を変えて、なんとかできないか、体調も同時におかしくなり切実な気持ちだった。
想いを残したい。
ただ、これといった明確な結果はずっとなかった。
なかば、収益だとか、アクセスだとか、あきらめていた部分は正直あった。
もう、好きなこと、想いが伝われば良いのだって、どこか言い聞かせながら記事を書いていた。
先生も今のままでといっていた。
でも、どこかで、「形」がほしかったことも事実だった。
体調に限界を感じ仕事を逃げるように休んだ。
この先のブログ書きに、可能性が確実にあると保証されないまま仕事を休み、逃げるようにやめていった。
我慢して、9月まで待てば、5年以上働くので、派遣から無期雇用の権利だって手にできた。
それでも、春に仕事の限界を感じてから9月までが途方もなく先の未来に感じて、権利を手放す覚悟を決めて休んだ。
当然だが、退職扱いとなった。
アクセスが上がったということ、
1年前、先生のブログに出会い、ライティングを学び、理解が遅いなりに続けてきたこと、積み上げたこと、それが数字という形になったことは、いままで綴ってきたこと、教えてもらったこと、不安になったこと、なんども先生とメールをして確認してきたことが間違っていなかったという「証」だった。
そう考えると、もう例えようのない満足感が湧いてくる。
あとあと、この結果を報告したところ、先生は4000個もの流星群だと言った。
言われてみれば、とても、貴重な、今まで見たこともない、流星群を観測してしまったような気がしてきた。
いつだかの夜、流星群が降るとニュースで知り、なんとなく眺めた夜空の流星が予想以上に多くびっくりした記憶がふと蘇る。
夏の真夜中、パソコンに映し出されるリアルタイムの数字が落ち着いてきたころ、放送中にグラスに注ぎ、飲むことを忘れていたビールも当然だがぬるくなっていた。
汗もかいていたし、とにかく暑い。
冷蔵庫から出した冷たい水を飲む。
お風呂場に行って、冷たいシャワーを浴びて頭と体を冷ます。
いったん全てを落ち着かせたかった。
着替えを済まして寝ようと横になるが、暑さなのか、興奮なのか、なかなか寝付けなかった。
それでも、しばらくすると、体をつつむ充足感、こんなに心が満ち足りた気持ちはいつ以来だろう。
仕事を辞めてから、どこか怖かった。
気にしてないと言い聞かせていたが、結果が欲しかった。
その後で、もうしばらくは結果を追わなくてもよいかな、という解放された気持ちも同時に湧いてきた。
もう少し好きに、数字を気にしないで、色々と書くことができる喜びと例えれば良いのか、
とにかく、その日は、心のどこかにあった渇望を満たしきった感覚だった。
もう夜中の3時をまわっていた。
昨日の21時からはじまった放送から、かれこれたった6時間くらいの出来事だった。
とても長い6時間だった。
真っ暗にした部屋で、久しぶりに開いたTwitterに一言、気持ちをつぶやく。
疲れ切って、充電をするのもあきらめたスマートフォンを枕元に置く。
とつぜん気持ちが緩み、眠気が襲ってくる。
意識を失う直前は、ただ、久しぶりにおぼえた、安心した感覚と喜びだった。
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